2/6/1998 ネットコラム第二十八回

映画「鬼火」、映画賞総なめ!!

 僕が音楽を担当させていただいた、原田芳雄さん主演の映画「鬼火」が、97年の映画賞総を、総なめにしてしまいました!。
ヨコハマ映画祭、おおさか映画祭、キネマ旬報の監督賞!。そして、なんと97年映画賞邦画部門第5位と、申し分無い評価でした。
はじめてラッシュを見たときは、原田さんのかっこ良さに見とれてしまい、このバックで僕の音楽が流れるのかと思うと、うれしさと緊張で身震いしつつ、にやにやしていたのを思い出します。

もう一つこの作品が評価されて嬉しかったのは、撮影の前から参加させていただいた事です。
まず、クラシックの曲、しかもピアノ曲からメインテーマを探してほしいと言う監督の要望で、曲探しをしたこと。台本上で曲名を言う台詞があったり、ピアニストがその曲を弾いたりする都合上、クランクインまでに準備をしておく必要がありました。通常、劇伴(サントラ)を制作するときは、ラッシュを見てからなので、この作品においては、後々のことも考えながら選曲しなければならず、結構プレッシャーでした。
それから、ヒロインの片岡令子さんが一ヶ月も、うちの事務所にピアノのレッスンに通っていたのも忘れられません(96年の7月頃)。彼女の映画に対する情熱は素晴らしかったです。レッスンを担当した先生も、片岡さんの努力に感激していました。

音楽は、すべて生演奏で仕上げました。最近の傾向として、シンセの打ち込みで作ることも多いのですが、作品の性格上、生演奏を使いました。メインテーマに選んだ、「ベニスの舟歌」をベースに、弦楽四重奏バージョン、ピアノカルテットバージョン、ラウンジバージョン、フルートバージョンなど、シーン毎にバリエーションを作りました。
結果として、大阪の町がベニスに見える、と言った感じでしょうか、不思議な質感のある映画になったと思います。

とにかくベースはメンデルスゾーンの曲ですが、アレンジやコーディネイトを考えると、自分が作曲をするより時間と手間がかかる作品でした。
本当に今回の受賞は、自分のことのように嬉しく思います。

打ち上げの時原田さんの隣だった事をしばらく自慢していました!
神尾 憲一