「ともだち」ストーリー
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また東京が始まる…。沢山の人込みの中。いつもと変わらない朝。いや、天気が良いだけ道路のほこりがひどいかもしれない。瞬間!彼の前を横切った風。サラリーマンになって3年目の湊(みなと)は、ふと彼女のことを思い出した。「紅井(あかい)…留佳(るか)…」

6年前、高校の卒業式が終わったばかりの3月のある日、湊が電車に乗っていると、次の駅で偶然留佳が乗って来た。チャンス!もうあきらめていたけど今なら言える。それに、東京に行ったらもう会えないだろう…。カウントダウンが始まった。

留佳の降りる駅まであと5駅。他愛ない会話が続く「早く言わなきゃ!」…しばらく話をしていると、留佳が急に泣き出した。彼女はついさっき片思いの人に告白して、そして、失恋…。泣きじゃくる留佳をなぐさめようと、湊はおどけてみせた。

まもなく…彼女の降りる駅。「また会おうね!」と言う留佳に、湊は笑顔でうなずくしかなかった。

それから数年後、留佳がこの世を去った。友人から、あのとき留佳はもう自分の死を知っていたはずだと聞いた。あのまぶしい笑顔の意味と、あの時の涙の意味を、今頃知った。…彼は今でも後悔している。もし告白していたら…。

また東京が始まる…。時間に流され、言葉の記憶が少しずつ消えて行く…。忘れたいことと忘れたくないことの区別が付かなくなる。留佳のことを忘れるのが怖い。君が今でも僕の心の支えだから。




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